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<実録>夏の北アルプスで熱中症&負傷 2つの原因と3つの反省点

2018年夏のことである。
この年は異様な暑さで、近年稀にみる猛暑だった。

そしてこの夏、数年前から計画のあった白馬三山縦走を遂に実現することになったのだ。

憧れの白馬大雪渓─。
いつか行ってみたいと思いつつ、落石に対する恐怖心が大きかった。
ついに挑戦の時が来たと、覚悟を決めて臨んだわけだ。

しかしこの山行はかつてない過酷な体験をすることになったので、失敗談として記録しておこうと思う。

事の流れ

この時の計画は2泊3日。
お盆休み直前の週末に有給をくっつけて両親と行って来た。
両親はこのルートの経験があり、私は初。

登山前日

白馬村までは車で。
村から見えた大雪渓はあまりに大きくて、ものすごい急斜面に見えた。
「アソコを明日登るの!?ウソダロ…あんなん人が登っていいとこじゃないよ…転げ落ちるんじゃない?」
完全に弱気モードになる。

この日は村のホテルに1泊しフルコースのディナーを堪能。
お盆前の平日で、なんと宿泊客は我々のみ。
シェフと山の話をしたり、貸し切り状態の一番風呂で大満足。

翌日早朝、車はホテルに置いたままタクシーで猿倉へ行きアタック開始という流れだ。

で、ホテルのシェフ、従業員さん、タクシーの運転手さん口を揃えて同じこと言ってた。
今年の暑さは異常!白馬村は避暑地なのに、こんなに暑いのは初めてだ。山の上も暑いらしいから気を付けて。」と。

まぁ、この年は全国的に猛暑だったし覚悟はしていたつもりだったのだが。
最悪の事態一歩手前までいく体験をするとは、この時はまだ思ってもみなかった。

一日目(天気:快晴)

猿倉から大雪渓を経由して白馬岳頂上宿舎テント場にてテント泊。

白馬三山縦走1日目

早朝。
体調は万全である。

天気にも恵まれ条件は最高だ。
気温を除けば。

猿倉でタクシーを降り、トイレを済ませアタック開始。
大雪渓の取りつき地点である白馬尻小屋までは樹林帯を小一時間歩く。

白馬尻小屋までは、大雪渓を見てみたいという一般のハイカーも多い。
この日大雪渓を見に行くという女性とお話しながら歩いたが、雪渓を登ると言ったら「信じられない!スゴいね~!」なんて騒いでいたっけ。

汗を大量にかきながら白馬尻小屋まで到着したときは、かなり疲労していた。
暑さが身体を蝕んでゆくような気がした。

でもここで実際大雪渓を目の前にして、かなりテンションが上がったのも確かだ。
村から見た印象より、斜面もなだらかだし。
雪渓を吹く風は幾分か冷たく涼しい。生き返るわぁ。

そして内心…意外にキタネーな雪渓…とも思ったり。
チェーンスパイクを装着しいよいよ大雪渓に取りつく。

白馬尻小屋から大雪渓に突入

よく晴れて視界も良好。
これならちゃんと上を見ながら登れば落石にも対応できそうだ。

それでも落石が発生したらどうしよう、どうかわそうとシミュレーションが止まらない。
ちょっとシャドーボクシングみたいになってたかもしんねぇ。
完全にヤバいヤツ。

休むことなくひたすら登り、雪渓歩きにも慣れてきた頃、杓子岳方面から岩がガラガラ崩れる音が終始聞こえるようになった。

ガラッと崩れたかと思えば、大きな岩が転がり落ちて雪渓まで落ちる前にパーン!ってすごい音で割れてしまうのがほとんどだった。
でもこの足元にゴロゴロある大量の岩は、全部落石痕ってことダロ…怖すぎなんだけど!

杓子岳方面、白馬岳方面両側からガラガラ!パーン!とかいってて、もはや正気ではいられない。
崩れるのを横目で確認しながらもう無我夢中でザクザク登った。

おかげでモウレツな集中力で大雪渓を抜け、両親到着まで40分も待つことになった。
安全区域まで来てしまえば、怖いものは何もない。
もはや今回の山行の核心部を制覇した気になっており「大雪渓怖かったけど楽しかったナァ」なんて思っていたのだ。

しばらく待って両親と合流し、白馬岳頂上宿舎を目指す。
これがまたキツくてキツくて。
最後の階段とかマジでしむかと思った。

ヨボヨボ状態でテント場へ到着し、ビールをグビ飲みしてテントを張り。
そのままサウナ状態のテントで、片足を外に投げ出して腹を出して眠りこけてしまった。
(晴れた日のテント内は猛烈な暑さになる)

ヘリコプターの轟音で目を覚ますとテント場すぐ目の前でホバリングし、救助隊がぶら下がって下降してくるではないか。
どうやら急病人が出たらしく、そのままヘリに収容され飛んでいくのを目の当たりにして、これだけ暑かったら誰がぶっ倒れてもおかしくないよなぁと思った。

で、日が暮れると一気に冷え込み…。
ダウンを着込んで夕食を済ませ就寝。

二日目(天気:快晴)

早朝にテントを撤収し、杓子岳、白馬鑓ヶ岳を縦走し、白馬鑓温泉でテント泊。

白馬三山縦走2日目

朝起きると、なんとなく身体が重い。
体調が悪いとまではいかないし、一応しっかり眠れたのでまぁ大丈夫だろうと。

ただ、食欲がないのがツラかった。
でも食べないと動けないので、雑炊か何かを無理やり食べて出発することに。

この日は槍温泉でテントを張る予定なのだが、テン場が狭いので父が先に行き場所を確保、私と母はゆっくり縦走することになった。

快晴のアルプス稜線を歩く。
まるで天国である。

白馬岳から杓子岳方面へ向かう

ふぅふぅ言いながら、なんとか元気に白馬鑓ヶ岳まで来た。
まぁ順調である。

しかしあることに気付いた。
余裕をもって持ってきたはずの水…足りなくね!?

猛烈な暑さで、想定以上に水を飲んでいたのだ。
鑓ヶ岳山頂の段階でこの残量だと、鑓温泉までもたないかも。
ヤベェ…この暑さで水がなくなったら最悪だぞ。

水を節約しなければ…
こんな時に限って行動食はパン(ランチパック)である。
口の中の水分全部持っていかれて、最低限の量だけ食べたところで諦めた。
とにかく早く鑓温泉まで行って、そこでしっかり食べようと。

ここから狂いだすことになる。

もう一つの誤算は、白馬鑓ヶ岳から鑓温泉までは2時間ほど下れば楽に着くと思っていたんだが、急な下りが延々と続くという私の一番苦手なパターン。

暑いし…喉乾いたし…でも水足りないし…。
母が持っていた梅ジュースに少し余裕があったので、少し分けてもらったりしながら必死で下る。

母は割と呑気で、「鑓温泉手前に確か水場があったわよ、大丈夫よ」って。
心配性な私はその言葉を鵜呑みにはできず、万が一水場がなかった場合のことを念頭に入れて節約して飲んだ。

ふんばる力がなくなってきて、足首や膝にかなり負担をかけるような下り方をしていたと思う。
この頃から、右足首が痛み始めた。

うわぁ~足痛い。。。
最悪だ。。。

痛みを堪えつつ、ガクガクの足で下ると、スピードがグンと落ちる。
早く小屋に着きたいのに、思うように進めない。
水がどんどんなくなる。
負のスパイラルだ。

暑い…もうヤダ…

痛みはどんどん酷くなって、ちょっと限界かもと思ったとき。
『ここから先危険 ストックしまえ』みたいな看板が。

これかぁ。
少し前にここを通過した父から電報のようなLINEがあったのだ。
『鑓温泉手前 鎖場滑るあぶない』

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ここから両手両足で降りるような垂直壁や岩場が出てくるようだ。
今の身体の状態だと、余程集中しないと大怪我するかもしれない。

気合を入れて危険区域に突入。
まぁ足は痛いが、こうやって岩場をガシガシ下る方が気が紛れて楽しい。

で、念願の水場を発見!!
ぬおぉぉぉぉぉぉぉぉ!!冷たぁぁぁぁぁぁぁぁぁい!!
うんめぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!

ふぃ~生き返ったゼ。

母「ホラね、言ったでしょぉ(ドヤ)」

0%に近かった体力のゲージがギュイーンって20%くらいに上昇した。
足は痛むが、水が飲めたことで助かった。
これでなんとかもちそうだ。

更に下ると、山岳パトロールのお兄さんたちが見張りをしていた。
どうやら転びやすいポイントらしい。

そんなこんなで、標準コースタイムより大幅に遅れてテント場到着。

すぐに食べ物を食べ、温泉に入って痛めた足を労わる。
もう足を着くだけでピキーンって痛い。
一晩眠って、どのくらい回復するだろうか…。

そして、テーピングテープを家に置いてきてしまったことを激しく後悔していた。
忘れたのではなく、重たいから置いてきたのだ。
今まで一度も必要になったことがないし、大丈夫だろうと。
もうバカ!バカバカ!

三日目(天気:記憶なし)

猿倉へ下山。

白馬三山縦走3日目

朝起きて、少し歩いてみる。
昨日よりはマシだけど、やはり足首が痛む。

鑓温泉小屋から猿倉までは標準コースタイムで4時間弱だ。
もつだろうか……。不安しかない。

かといって自力で下山する以外の選択肢はない。
這ってでも猿倉まで行かなければ。

そんな私を見て、母がフラ~っといなくなったかと思ったら。
小屋にいたパトロールのあのお兄さんを捕まえていた。

「お兄さんがテーピングしてくれるって。」

そっか、パトロールのお兄さんがいたんだった!
ありがとう母!なにげに頼りになる母!
で、お恥ずかしながらお兄さんにお世話になることに。

お兄さんは私のキッタネェ足にテーピングを巻きながら色々話を聞いてくれて、励ましてくれて。
本当にありがたかった。

おかげで痛みも軽減し、下山を開始する。
ゆっくり行くので、5時間以上かかるかもしれないな。

このコースは雪渓ありお花畑ありの最高のロケーションだ。
気を紛らわしながらゆっくり下る。

標高が下がると暑さも増し、テーピングしていても痛みはある。
だんだんと意識が朦朧としはじめたのは、つまらない樹林帯に入った頃だったか…もっと前だったか。

尋常じゃないほど汗をかき、自分の身体じゃないみたいにフワフワする。
自力で下山しなきゃという一心で、なんとか一歩一歩進めていたものの、朦朧としているので水分補給に気が回らなかったようだ。
気を抜いたら、このままぶっ倒れるなこれ。

そこでブドウ糖タブレットを摂取。
ブドウ糖は即エネルギーになってくれる。

これで多少頭がスッキリしたというか、意識が一瞬戻ったような。
それでも大きな木を見て「電柱だ!私いつのまにか下界に下りて来てたんだ!助かった!」なんて喜んだりして。
ヤバいよなこれ。幻覚ってやつか。意識の混濁か。

ほぼ無言でひたすら下ってきた。
樹林帯に入ってからの記憶がほとんどないのだ。
そんな状態でボロッボロになって猿倉到着。

両親も励ますことしかできず、相当心配したようだ。
猿倉で食べたガリガリ君ソーダ味は、今まで生きてきて一番美味かった。

てれってー
てれってー

白馬村に戻って、温泉でテーピングを外したらマメ(水膨れ)がたくさんできていたよ。でもテーピングしてもらわなかったら、無事下山できたかどうか…。パトロールのお兄さん、本当にありがとうございました!

原因

猛暑

今回の一番の原因は、想定外の暑さだ。
この年東京では、状況によってはプラスチックが溶けるほどの異常な暑さであった。
6月~8月の平均気温は、関東では統計以来最も高かったという。

避暑地である長野県白馬村の人々でも口を揃えて「こんなに暑いのは初めてだ」と言うほど。
暑いのはわかっていたし、この年の夏は毎週末のように山へ行っていたのでそれなりの対策もしていた。

ただ、この3日間は晴れて特に気温が高かった。
気象データを見ると、白馬での2018年8月の気温で最も高かったのがこの3日目である。
運悪く、しむほど暑い日に負傷した足で下山することになったわけだ。

エネルギー、水分不足

暑さで予想以上に体力を消耗したように感じる。
汗の量は尋常じゃなかったし、2日目に水が足りなくなったことで食事もうまく取れず最悪な状況を作ってしまった。
そのため、エネルギーも枯渇しかけていたかもしれない。

早く目的地に着いて休みたいのに、身体が思うように動かず進めない。
完全に負のスパイラルにハマった。
遭難とは、このようにして起こるんだなぁと思って。

そんな身体に力が入らない状況で、足首にめっちゃ負担をかけながら斜面を下っていたので痛めてしまったわけだ。
たぶんあの歩き方だと、体重の数倍の負荷がかかっていたのだろう。

2日目の鑓温泉手前で会ったパトロールのお兄さんは、熱中症の症状が出ている人がすごく多いから注意するように呼び掛けていた。

恐らく私も2日目、3日目は熱中症になっていたのだと思う。
しかも3日目は意識も朦朧としていたので、かなり危険な状態だったかもしれない。

反省点

水が足りなかった

もうな、コレ。
ほんとコレ。

水が足りないなんて、登山者としては初歩的すぎるミスである。
予備をもっと持っておくべきだったのだ。
倍量とはいかなくても、想定外の事態への備えはしておくべきだ。

エネルギー補給がうまくできなかった

もうね、ほんとコレ。

暑いのに行動食パンって。。。アホか!
しかも水足りない事件が勃発していたから、水で流し込むこともできず。
結局用意していた半分しか食べられず。

まぁでもパンはパンでもツナマヨのランチパックだったからまだ食べれたけど。
あとはエネルギードリンクでなんとかギリギリもった感じだ。

でも、初日のおにぎりも暑くて無理やり詰め込んだだよな。
暑いと食欲がなくなってしまうから、なるべく食べやすいものが良いかもしれない。

テーピングテープを家に置いてきた

もう~ほんとアホ。

テーピングテープって、今まで必要になったことないし結構重量あるから今回意図的に置いてきたのだ。
小屋でお兄さんにテーピングしてもらう際、それを言ったら「それはかなりヤンキーですね!」と言われた。

私みたいなアホにも笑顔で対応してくれて、本当に感謝しかない。
で、芯のないタイプなら軽くていいですよってアドバイスまでしてくれて。
下山中も道で唐松岳に向かうお兄さんと会って、声を掛けてくれてなんとか頑張れた。

本当に素敵なお兄さんだった。
結婚してください。

この時以来、必ずテーピングテープを持って行くようにしている。
芯なしのテープも買ってみたんだが、結局芯ありの一般的なやつを持って行っている。

こんな感じで、憧れて憧れてやっと実現した白馬三山縦走は散々な結果に終わった。
無事に下山できたから良かったものの、一歩間違えたらレスキュー事案になっていたかもしれないと思うと背筋が凍る思いだ。

こうしてあらためてまとめると、いろいろダメすぎるだろうと思う。
この時の失敗を忘れないためにも、記事にした次第である。

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<実録>夏の北アルプスで熱中症&負傷 2つの原因と3つの反省点
しょうもないつぶやきが多め